うらかわ歯科医院の窓辺を飾る生花は、開業した当初から、津屋崎の百合農家のH農園から直送してもらっています。もう20年近くHさんのおかげで、お花を絶やさずに患者さんを迎えることができました。
ちょうど今じぶんは、百合の他にチューリップ、フリージャが混じって送られてきて、毎年春の到来を感じます。
さて、いつもお願いする日じゃないのに、津屋崎からのお花の宅急便が届きました。
箱をあけたスタッフが、小さなギフトカードを見つけました。
「1年間、大変な時、ささえてくれてありがとう。感謝の気持ちを込めて、お花を贈ります。N子」
と書いてありました。
私は、それを受け取って、考え込んでしまいました。N子さん???
私が、一年間ささえてあげたN子さんなんて、いたっけ???
私は、記憶のす べてを総動員して、N子さんなる人物・・・しかも、私が1年間彼女の役にたったと思えるN子さんを思い出そうと格闘しました。・・・しかし、どんなに考えても思い起こせません。
そうこうしているうちに、私は、1年間誰かをささえたり、誰かの人生にささやかでも、かかわり、お役に立ったりしてるかしら・・・という根本的な疑問が、私の脳裏にわいてきました。
そして、次第に、なんだか恥ずかしくなりました。そんな風に生きてきてないのに、どこかの素敵なN子さんは、ささいなことにでも、感謝する心を持っていて、こんなしゃれたことをしてくれるのかしら・・・?
とうとう、お花をいつも贈って下さるHさんにお電話しました。するとどうでしょう。
「すみません。シャッフルしてます。お届けがいくつかあったので、先生の所に送るのと、先生の所にあるのが入れ替わっています!」
と、申し訳なさそうな返事が返ってきました。
な~んだ。そうだったのか・・・私は、ほっと胸をなでおろし、あせってしまった自分がおかしくなりました。
しかし、一段落してまた、今まで私の心によぎった気持ちをまた思い出します。
1年間、一番大変な時にささえてくれてありがとう・・・・私は、誰かからそんな風に思われるような日常をすごしているかしら・・・また、逆に時々、大切な人に、そんな風に感謝を伝えることがあるかしら・・・
そう思うと、なんだか恥ずかしい気持ちになってしまいました。
結局、美しいチューリップは、H農園のミスということで、そのまま、うらかわ歯科の窓辺を飾ることになりました。
季節は、春。人が別れていく季節でもあります。N子さんは、大変な1年を乗り越えて、お花を贈れるほどに、良い状況となり、美しい春を満喫してるかもしれません。
チューリップを見ると思い出す思い出が、また一つできてしまったようです。
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